歯医者

そう、行き付けの歯医者は受け付けから、看護婦さん(正確には別の呼び方があるはず?)まで、なぜか美人ばかりなのである。こうも揃っていると何か不自然さを感じてしまうのだが、風俗系の営業は一切行ってはいない。

診察も山場を越え、歯の型を作る作業に入っていく。その頃になると男の先生(彼も優しそうでいい人なんだな・・)は、別の患者さんのところへ行ってしまうので、一人の看護婦さんが残されるわけである。

ピンク色の粘土みたいのをこね回し、ボクシングのマウスピースに似た物に盛り付け、俺の口の中に「ガッ!」と押し込み、下の歯に刷り込むように押し付け、「は〜い、このまま少し我慢しててくださいね・・」。

ピンク色の粘土は看護婦さんの左手にも小さな山を作っていた。間違って付けてしまったのかと思っていたら、その小山粘土で固まり具合を見ているらしい。

口に押し込まれたマウスピースは、看護婦さんの右手の指で軽く押さえられている状態、「このまま我慢」の「このまま」がいつまで続くのか…

口は閉じられないから、咽の奥に唾液が溜まってきてしまい、咽はそれを飲み込みそうになるのだが、その時に舌が動いてしまいそうで出来ない。

マウスピースを押さえる為に、口の中に入っている看護婦さんの指は、こんな過酷な仕事をしているに、とても柔らかくすべすべしている(ただの予想だが)。折りたたんだ舌がその指に触れると、なんとなく恥ずかしいので気合を入れて沈黙を保つ!

呼吸をすると、おじさんの生あたたかい息が、看護婦さんの指の回りを流れていく、気持ち悪いかな? そんな事を考えると、呼吸も出来なくなってしまう。

こんな瀕死の状況に追い込まれているのに、看護婦さんは「今日のお昼はなに食べよっかな・・」そんな事を考えていたりするのは明白だ。

やっと、左手の小山の硬さが合格ラインに到達したらしく、「ハイ、取りますね〜」。口の中から異物が消え去った開放感と、息を細くしていたので思いっきり深呼吸をしたいが、それも恥ずかしいので、静かに大きく呼吸を整えていると・・

「じゃあ、今度は上の歯をやりますね〜」

「ちょっと待て!」そう言いたかったが、まだ整わない呼吸をしている口に、マウスピースは押し込められた…。